遊戯は困ったように私の名前を呼んで、じり、と数センチ後ろに下がった。
どこか怯えたようなその瞳に、私の口元は思わず笑みの形。
何が怖いの?
どうして、怯えてるの?
私はほら、こんなに優しくて良心的じゃない。
なのに、どうして?
そんな問いは、欲しい答えが返ってくる訳じゃないから口にしない。
そもそも、私が欲しい答えなんてものが存在しないんだから、問い掛けるだけ無駄な事。
欲しいのは的確な答えでなく、別にこの黄金のパズルでもない。
私はね、遊戯。
ただあなたを可愛がりたいだけなんだよ。
だから、彼の耳元で静かに囁いた。
「ばいばい、シルバー」
言うや否や、素早く遊戯の首からもぎ取った千年パズルを、力一杯放り投げる。
ただでさえ大きな目をさらに大きく見開いた遊戯。
きらきらと光を反射しながら遠く落ちていくパズルはすごく綺麗。でも、そこからはきっと悲痛な叫び声が聞こえるのだろう。
彼はなんとも言えない表情で私を見上げた。
「君ってひとは、本当に…」
その言葉がおかしくて。
だから私は、優しく笑みを浮かべて言ってあげたのだ。
「大丈夫。遊戯の事は投げたりしないから。…ね?」
大邪神め、消え失せろ!
と、もう一人の彼は言う。
と、もう一人の彼は言う。