嫌な予感と共にひょっこり顔を覗かせたのはセト先輩。
「ちわー。で、何のご用でしょうか」
すかさず中に入ろうとする奴を止めて、私は言った。
「やぁ。私はキサラに会いに来たのだ!」
キラキラスマイルに教室の女子達がきゃあきゃあ言う声が聞こえる。
皆騙されるな!! こいつはひどい変態なんだから!!
「先輩、言いたいことは良く解ったから自分の教室に戻ろうか」
「何故だ!? キサラは自習、私のクラスも自習。ならば愛しい者のもとに会いに行くのは至極普通の事ではn…」
「うん、黙ろうか先輩?」
大体どこからうちのクラスが自習だと嗅ぎつけてきたんだろう。
まぁ、どうせばく先輩辺りが情報流したんだろうけど。
「そこをどくのだ!! 私にはお前の向こうに愛の光が見える!!」
「眼科に行ったほうがいいですよ」
「いや、私の視力ははるか彼方のキサラをも見つけられる!!」
…う、うぜえ。
「それに今日は我が宿敵海馬もおらぬ!! さぁ、そこをどくのだ、!!」
普段はイヤミでうざい海馬の有り難みを感じるよ。
こんなのの相手、ずっとやってたら疲れるなんてもんじゃないわ。大体愛の光とか言いだす辺りがすでに危ないし。
溜息をついたのと窓の外から派手なエンジン音が響いてきたのはほぼ同時。
『貴様何をしている!! 嫌な予感がして来てみれば…!』
拡声器越しの声は間違いなく海馬瀬人のもの。
うわ、ナイスタイミング。
「海馬!? 貴様、今日は休みのはずでは…!!」
『ふはははは!! キサラの危機を感じて出向いてきたのだ!! 貴様のようなどこの馬の骨ともわからん者にキサラを会わせる訳にはいかん!!』
前言撤回。
やっぱ有り難くないや。むしろうざっ。
拡声器な時点でうざさ五割増しだよ。
廊下の向こうから先生たちの走ってくる姿を確認して、私は席に戻る事にした。
後は任せたよ、センセ。
でもね、ほんとの事言えば
今日は彼女、休みだったの。
今日は彼女、休みだったの。