早くプログラムを完成させたいと言っていた彼は、昨夜もブルーノと二人で徹夜の作業をしていたに違いなく、の役目はそんな二人に栄養ある朝食を用意する事。
普段はまめに料理をして働かざる元キングに食事を用意する遊星も、自分の作業に夢中になると身の回りの事にはとんと疎くなってしまうし、クロウの作る料理は流石子供達の世話をしていただけあって確かに美味しいのだが、メニューと味付けが明らかに小さな子供向けのそれ。
ジャックに至っては目を離すと高級レストランに行く始末。あともしくはカップ麺。
ついでにブルーノは食べても食べなくてもいいと言う極めて不健康な食生活。
ぎぃ、と頑丈な扉を開けるとオイルの匂いがふわりと香る。
半地下のガレージを見下ろせば、遊星とブルーノがくまの浮かぶ顔をこちらへ向けていた。
「二人とも、おはよう」
「ああ、いつもすまない」
「相変わらず早いねえ、」
二人の声には疲労が滲み、苦笑しては短い階段を降りる。
「のめりこむ姿も魅力的だけど、ちゃんと寝ないと二人ともひどい顔よ? 素敵な顔が台無しだわ」
「大丈夫だ、まだ3日しか……」
「はい、減らず口。3日も徹夜すれば十分です!」
遊星の言葉を遮り、はキッチンへ向かう。
微妙な顔をする遊星と、コーヒーに手を伸ばすブルーノに背中で声をかけた。
「すぐに朝ご飯できるけど、待つ? 因みに今日の朝はあわびのお粥だよ」
知り合いから安く仕入れた食材。
本当は鮭もあったが、連日徹夜の二人には少し厳しいだろうと思ってのこと。
鮭は後でゾラにお裾分けする事にした。
朝食の方はもうほぼ完成して持ってきている。温める間に、毎朝恒例の味噌汁を作るだけだ。
「今もらおうか」
そう答えた遊星の声に「わかった」と返し、鍋を火にかけた。
朝の静かな空気に小さく響く鍋の音。
ああ、落ち着くなあ。
そんな事を考えながら、ふとガレージの小さなテーブルを見るとそこに座っているはずの遊星とブルーノは……
「……寝ちゃってる」
ぽつりと呟き、仕方ないなぁ、とため息ひとつ。
上にあがって毛布を取ってきて二人の肩に掛けた。
「全く、小さな子供みたい」
そう言うの表情は優しく、遊星達が子供なら、それはまさしく母親のようで。
静かにキッチンへ向かったは、手早く朝食を仕上げてから、そっとガレージを後にした。
夢中になると止まらない。
手間のかかる大きな子供たち。
手間のかかる大きな子供たち。