クロウ
「なぁ、お前はデュエルしないのか?」

 デッキ調整をしながら、向かいの席に座って本を読んでいる友に尋ねた。
 知的な瞳が不思議そうにクロウを見る。無言で「どうして?」と問う彼女は、小さく微笑んだ。

「クロウは、あたしもデュエルした方がいいと思う?」
「え? いや、だってよ……」

 反対に問われて口籠もる。
 は、チームサティスファクション以前からの友で、ずっと傍でクロウ達のデュエルを見てきた。
 ルールも解れば、カードに対する知識も卓越しているし、何より彼女はクロウの知る誰よりも策士だ。
 そんなが、自分でデッキを組んでデュエルをしたならば、きっととても楽しいものになるはずだと思う。
 彼女が何か訳ありなのは薄々気付いてはいるが、仲間だけでデュエルする分には支障など無いだろうに。
 純粋に、「もったいない」という言葉が零れた。
 何故かその言葉に小さく笑い、はクロウの手からそっと一枚のカードを引き抜く。

 あたしには。

 そう言って、はカードに目を落とす。
 陰りの浮かぶ表情で、彼女は静かに言った。

「あたしね、実はサイコ・デュエリストなの」
「!?」

 その言葉に思わず勢い良く顔をあげ、少女の顔を見ると、笑みはいつの間にか状態めかしたものに変わっていて。ついで、にやりと笑ったは人差し指でクロウの額を押す。

「……なーんちゃって」
「冗談にしちゃ、質が悪いぜ」

 苦い顔をしてそう言えば、は「ごめん」と笑い、またいとおしそうにカードに目を落とした。
 その瞳が、あまりに優しかったものだから、クロウは何も言えなかった。

もう、戦うべき刃は必要ないから>
後に彼女はそう言った。
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